「木」と「からだ」と「健康」のはなし

■目にやさしい木
★目にやさしい光 〜紫外線吸収★
 日当たりの良い部屋は、とても爽快で清々しいものです。しかし、必要以上の光はただただまぶしいだけで、私たちの目をとても疲れさせます。さらに、太陽光線には、私たちに有害な紫外線も含まれています。
 下の図をご覧ください。木材は他の素材に比べ、波長の短い光を吸収し、波長の長い光を反射させることがわかりま す。この波長が短い光というのが紫外線。反対に、波長が長い光は、温かみがあるといわれる赤外線です。つまり、有害な紫外線を良く吸収し、赤外線を反射させる木の家は、目にやさしい光があふれているということです。


★木の模様・光沢 〜視覚的効果★
 「ゆらぎ」という言葉をご存じでしょうか。平均値は一定でも、瞬間的にその平均値の近くで変動している現象、または平均値からのズレのことをいい、音、風、光、波など自然界のすべてのものが持っています。
 私たちが不快に感じる音や形には「ゆらぎ」がでたらめに起こる一方、心地よく感じるものには、ある程度の規則性をもった「ゆらぎ」が認められます。その特性を追究したところ、周波数(frequency=f)に反比例することが解明され、「1/fのゆらぎ」と呼ばれています。
 木の年輪も等間隔に見えて実はズレがあり、基本的に1/fのゆらぎになっています。その年輪が材の面に木目となってあらわれ、木目の間隔と流れが1/fのゆらぎをもたらし、視覚を通して人の感覚を心地よく刺激します。
 さらに、木材の表面には微妙な凹凸があり、それによって光が散乱されるので、樹種によって独特の光沢を見せること も、木は味わい深く、心がやすらぐといわれる要因でしょう。



■耳にやさしい木
★木の吸音力★
 木には、低音・中音・高音の音をバランス良く吸収しながら適度に響かせるという性質があるので、室内に木材を使用した場合、不快な雑音が吸収され、音がまろやかに響きます。
 室内の音は、振動が伝わる経緯によって「空気伝搬音」と「固体伝搬音」に区別されます。固体伝搬音は、人や物が床や壁の衝突したときに発生します。空気伝搬音は、ステレオなどの音源から発生する振動で、空気中を直線に進みますが、壁や床にあたると反射する音、材に吸収される音、反対側に透過する音に分散します。
 木材は、この空気伝搬音を適度に吸収します。
 コンクリート壁のような高質量・高剛性の面でできた部屋は、音エネルギーの99%近くを反射するので、音が減衰しにくく、残響時間が長くなります。そのため、音がいつまでも室内に残り、しまいには耳障りに感じます。しかし、部屋の一面でも木質材料の板などにした場合は、その部分が空気伝搬音を適度に吸収するため、残響時間が大きく減少し、話し声や物音がやわらく聞こえます。
 また、昔から楽器には多くの木が使われているのも、木材は振動しやすく、振動を適度に吸収し、共振性が鋭くないという音響的性質がいかされているからです。バイオリン、ギター、ピアノ・・・いずれの楽器も美しい音色を奏でるのはそのためです。



★木の遮音性
 遮音性の高い住宅は居住性が高いとされています。木にもある程度の遮音性はありますが、それ自体はあまり期待できるものではありません。
 しかし、木材は遮音性は低いものの、他の材にはない性質があります。それは、2万ヘルツ以上の超高周波音を通すということです。超高周波音は自然界が発し、緑の多いところに多く発生します。人の耳には音としては感じられませんが、肌や身体で感じ、人間の五感の快感覚を育てるといわれています。
 人が心地良く感じる音を追求していくと、住宅の遮音性に対する考え方も、次第に変わってくるのかもしれません。



■肌にやさしい木
★木の感触★
 木材は金属など他の素材に比べて人との関わりは長く、やさしくて面白みのある材料であることが経験的に知られています。
 目を閉じて色々な素材に触ったときの、血圧や脳波の生理応答測定と官能評価による印象の調査を行った結果、官能評価では木材は自然な感じがするという印象が持たれ、血圧は図が示すように低下することがわかりました。不快であると評価されたガラスへの接触は、逆に血圧の上昇を起こしています。
 また、脳波測定では、木材の上にただ手を置いた場合の脳波は、他の素材と変わらないもしくはやや弱いことが示され、対して、積極的に木材を撫でた場合は、脳の活動が他の素材に比べて活発になるという結果がでています。
 木材が人にやさしく興味深い材料であることを、データも証明しています。



★木の温もり
 何かに触れたときの温かさ・冷たさを「接触温冷感」といいます。心理的な感覚の大小を数値(間隔尺度)で表現する尺度構成法で、様々な材料の温冷感の間隔尺度を示したものが右の図です。
 ご覧のとおり、スギなど木質系の材料は温かい側に位置しています。木材には空気の隙間や細胞があるため密度が低く、熱伝導率も小さいので断熱性が高く、手足を接触させたときに材料に熱が奪われにくいという特性を有しているためです。
 この木の温もりこそ、私たちがつい木に惹かれる所以なのでしょう。


■心にやさしい木
★ストレス抑制効果★
 木から発散される「フィトンチッド」という成分によって、森林の中はさわやかな空気が広がり、とてもリラックスした気分になります。下の図は、森林浴によるストレスホルモンの変化を示しています。
 フィトンチッドとは、樹木自身が作り出し発散している揮発性物質で、テルペン類と呼ばれる有機化合物を主な成分とするものです。人間の自律神経を安定させる効果があり、ストレスをやわらげ、心身をリフレッシュさせます。この効果は森林だけではなく、木が木材になった後も変わりません。
 つまり、木材が使われている家にいるだけでも森林に行ったときと同様の効果が得られるので、特別な道具や時間を使わなくても、日常生活の中で自然とストレスがやわらぎリラックスしてきます。
 また、フィトンチッドに限らず、他の項でも述べているように、木は人の五感に対して情緒的に作用する素材であることも、ストレス抑制に大きな効果があるといえます。


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