実践!地材地消 - 自治体の取組 / 森林とふるさとを元気にする「地材地消」

<自治体の取組 1> 地場産木材の活用 - 芦別市

地元育ちの木材で建てる市民のための快適住宅。

 炭鉱のまちとして栄えた一方、総面積の88%が山林で、カラマツ、トドマツ、エゾマツを豊富に産出する林業のまちとしての顔も併せ持つ芦別市。地場産木材の利用促進を図ろうと、老朽化した公営住宅の建て替えに伴い、地場産カラマツ材を使った木造集合住宅の建設に初めて取り組みました。平成20年から1棟7戸の住宅を建て始め、平成26年までに10棟70戸を建設する予定です。
 もともと高度な乾燥技術をもつ企業が市内にありますが、地元の森林組合、工務店ともに、柱や梁などの住宅用建材としてカラマツを扱った経験がなく、不安を感じるスタートだったそうです。
 そこで、先進地である道東の民間木材会社や工務店、官庁では鹿追町に視察に行ってクレームについて情報を集めるとともに、北海道林産試験場から乾燥時の含水率についてアドバイスをもらうなど、準備を整えてカラマツ無垢材での公営住宅建設に着手しました。
 結果、土台から柱、下地材まで全てにカラマツを活用した初の木造公営住宅が誕生。雁木(長く突き出たひさし)の部分をあえて木材が見える設計にすることで、地場産カラマツデザイン性の向上とコストダウンを一石二鳥で図りました」と、工夫を語る佐藤主査。
 明るく、暖かく、雪かきの負担が少なくてすむ住宅は、入居者の大半を占める高齢の皆さんに大好評。地元・芦別育ちの"木の家"が快適な市民生活を支えています。

木を見せるデザインでコストダウンも実現した雁木部分
▲木を見せるデザインでコストダウンも実現した雁木部分

部屋の広さは、2DK、2LDK、3LDKの3種類
▲部屋の広さは、2DK、2LDK、3LDKの3種類

<自治体の取組 2> 地場産木材の活用 - 足寄町

ふるさとの木に囲まれて、子どもたちもすくすく。

 森林面積がまちの84%を占めるという、足寄町。基幹産業である一次産業の振興を目的に地場産カラマツを使った庁舎の建設など、これまで積極的に地材地消に取り組んできました。さらに暖房・給湯にも、地場産のチップからつくる木質ペレットを燃料にするペレットボイラーを使用し、エネルギーまで"地元産"で賄ってきました。
 2007年、保育園などの施設統合で生まれたのが、木造二階建(一部鉄筋コンクリート造)の子どもセンター。保育所、子育て支援センター、児童デイサービスセンターを備えた施設は地元産カラマツの集成材をメインに、土台、柱、梁、屋根といった構造材から、内装までふんだんにふるさとの木を使っています。もちろん暖房・給湯はペレットボイラーです。
 近年は情操教育の意味から文部科学省も推奨している木造の教育施設。堀内センターは「なんと言ってもコンクリートの建物と違って、感触が柔らかく温かみがあるところがいいですね」と語ります。「保育園では裸足保育をしているのですが、夏は涼しく、冬は床暖であたたかい木の床のおかげで、子どもたちは1年中元気いっぱいです」。
 施設内には地場産の木のベンチに腰掛けてお話を聞いたり、本が読めるコーナーも。ふるさとの木が子どもたちの健やかな成長を応援しています。

ふんだんに地場産カラマツ材を使った子どもセンター内部
▲ふんだんに地場産カラマツ材を使った子どもセンター内部

保育園の子どもたちは1年中裸足で木とふれあう
▲保育園の子どもたちは1年中裸足で木とふれあう

<自治体の取組 3> 地場産木材の活用 - 津別町

木の匂いのする学校が好き。愛林の町の木造校舎。

 木材産業が盛んな津別町。総面積の86%が森林のこの町には推定樹齢1200年のミズナラのご神木や、木工工芸館があり、もちろん木材工場、製材所もあちこちに。
 津別では2000年に町内の本岐小学校を改築。その際「愛林の町」というスローガンにふさわしく、自然環境に調和した「やさしい外観と木の温もりのある建物」にと、地元で加工した地元産カラマツ材や道産エゾマツ材を使った校舎が生れました。
 天井にはみごとなエゾマツ集成材のトラス(構造材)が組まれていて、下駄箱も教室の壁もロッカーもすべて木が素材。子どもたちは木の香りを呼吸し、目でみて、触って、走って木のよさを自然と身体に取り込んできます。
 木には「フィトンチッド」と呼ばれる成分があり、人の免疫機能の向上に役立つと言われています。また、木の床は成長期の子どもの膝や腰への負担が少なく、転んでもケガをしづらい長所があります。建築に携わった同校の高橋前校長は、校舎について「『自分たちが住んでいる町の木を使う』という意義に加え、木の香りや質感、色合いと、多くの面で子どもたちにとってよい空間であると感じます。特にふと見上げたときの高い天井は圧迫感がなく、とても気持ちがいいです」と語ります。
 地域の木に包まれて成長することで、目に見える以上に多くのことを子どもたちは木から受け取っているのでしょう。

メインの体育館 みごとなトラスの下で元気に走り回る子どもたち
▲みごとなトラスの下で元気に走り回る子どもたち

子どもたち集合 「はだしで走る気持ちいいよ。転んでもそんなに痛くないし」「明るいから好き」「家より学校が好き」と、木の校舎は子どもたちにも好評
▲「はだしで走る気持ちいいよ。転んでもそんなに痛くないし」「明るいから好き」「家より学校が好き」と、木の校舎は子どもたちにも好評