2005.03.02
山口邸


今回は、ドラマ「北の国から」の丸太小屋づくりのような自宅作りを実践された山口さんを訪ねました。

北海道の大ファン

 まず、家の紹介に入る前に、施主についてちょっと解説しましょう。
 施主の山口さんは、北海道にあこがれて本州からいらっしゃいました。以前は首都圏でサラリーマンをされていたそうです。だんな様も奥様も北海道には親戚がおらず、お子様は二人(しかもまだ小学生!)、仕事をやめての北海道への移住。私たち道民がなかなか気づかない『北海道の魅力』にひかれ、かなり無謀にも(失礼!)移住されてきた山口さんは、何においても北海道に強くこだわっておられます。
 でも、山口さんの口からは「北海道はこわい」といった意外な発言も。よくよく聞いてみると、吹雪など、北海道の大自然は時に厳しい試練を与えますが、それに耐えられるだろうか不安もあるようです。

地域の気候に最適な地域の木材を

 そんな山口さんが自宅の材料に道産材を選んだのは、単に北海道のファンであるからだけでなく、「地域の気候に最も適しているのは地域の木材ではないか」と考えられたから。
 トドマツ・エゾマツなど、北海道の大自然のなかで育ってきた樹は、幾度となく、吹雪などの厳しい試練に耐えてきました。そういった樹でできた住宅は、きっと厳しい試練にも耐え、住人を守ってくれるはず。だからこそ、以前から住宅に使用されてきたのだ(最近は輸入材に押されて使用量が減少していますが)、ということです。

地材地消の家づくり

こだわって選んだ久保木工の木製サッシ
 山口さんは、家の“つくり手(大工さんやメーカー)”にもこだわりました。それは「北海道はこわい」という考えにも関連するのですが、大自然の試練に耐えられる家を建てるには、信用できるつくり手を選ばなくてはいけない、という考えからです。
 普通、家を新築するときは、施工は工務店にお任せで、工務店が資材やつくり手を選びます。いくら「こだわりの家づくり」といっても設計にかかわるのがせいぜい。
 しかし、山口さんは資材のほとんどを、つくり手(メーカー)を見ながら選んだといいます。たとえば、サッシや建具は偶然ホームページで「久保木工」をみつけ、工場のある旭川まで大工さんを連れて製品を見に行ったそうです。私たち『ウッドプラザ北海道』に「道産の建築資材について教えてほしい」と連絡をいただいたのもこのころ。いくらかお役に立てたでしょうか。
 大工さんの『プロの目』が資材を見極め、山口さんの人生経験がそのつくり手を見極めて、資材を選びました。ある資材会社では、そんな山口さんを社長が気に入り「おまけ」してもらったという良い面もあったようです。

施工にかかわる

自力で施工したスギ大和張りの外壁
 山口さんの家づくりに対するこだわりは、これだけではありません。なんと、外壁を張ったのも、フローリングを張ったのも、山口さんとその家族だというのです。
 外壁はスギの板材による、大和張り。かんなをかけていない、乾燥もしていない、比較的安い板材を、木表と木裏を交互に重ねながら一枚ずつ釘で打っていきます。木が乾燥していくにつれしっかりとしまり、かんなをかけていない表面は風雪にも強いとされています。
 これはだんな様と奥様と2人のお子様、それに友人(いずれも素人)による力作。一見素人の作に見えませんが、よくよく見ると、釘の打ち損じや、材面への傷や汚れ(スギは素手で触ると黒くなるのです)、端がそろっていないなどの素人らしさが発見できます。でも、それでもいいんだと山口さんは言います。「だめになってもまた自分ですぐに治せるから」
 フローリングも同じく山口さんとその家族の施工。お伺いしたときに、小学生のお子様が細かく手順を教えてくれたのにはびっくりしました。
 施主自らの施工では、家のすべてを知ることができ、メンテナンスなどの不安がないことに加え、教育的効果もあったようです。最初、一緒に現場に来てもテレビゲームばかりしていた子供たちが、いつからか手伝うようになり、働くことの楽しさを知ったとか。いいですね、自力施工。(当初リフォームを想定しており、資金が足りなかったという事情もあったようですが・・・)

情報がない

 山口さんの家づくりは、自力施工に理解を示してくれた工務店や、プロの目で木材のことを教えてくれた木材産業の方など、「人に恵まれた」といいますが、最初からいい人を知っていたわけではありませんし、いい人に恵まれても、その人を理解する知識がなくてはその人の良さを活かすことができません。山口さんは非常に努力されて、書物やインターネットで調べ、勉強しながら、家づくりをされてきました。
 そこで感じたのは「情報が少ない」ことと、「プロだけの閉鎖された社会」だということ。どのような資材をどこからいくらで買えるのか。それぞれの専門用語の意味は、などなど、わからないことばかりだったといいます。
 山口さんは努力家なのでそれでも道産材を選んでくれましたが、ほかの人だったらあきらめて工務店等に丸投げだったかもしれません。それが木材への関心を失うことにつながり、道産材の需要が減っていくことにつながる・・・私たち木材業界はもっと消費者側にたった情報提供が必要なのだと、改めて感じました。
 わたしたち『ウッドプラザ北海道』は今後も、皆様のためになるような情報提供に努めますので、よろしくお願いします。

参考資料

  山口さんの住宅に使用した木製品

[久保木工のサッシ]
[サトウのカラマツフローリング]

  地材地消(ちざいちしょう)とは

[地材地消]

  山口さんのホームページ

[百姓魂](別画面で開きます)

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